避難所環境の改善策:高齢者を守るための6つのポイント

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台湾地震 発生後3時間で避難所…スピード開設ができたワケ(2024年4月5日掲載)|日テレNEWS NNN
12人が亡くなり、1000人以上がケガをした台湾での大地震から3日目。震源に近く大きな被害が出た花蓮市では、地震発生後3時間で避難所ができ、受け入れが可能になりました。スピード開設が可能になった理由と…

同じ体育館でも、3週間後は違う

避難所の環境について書きます。

先に立場を明かしておくと、私は災害現場の専門家ではありません。訪問リハビリテーションの現場で、高齢の方の生活を毎日見ている作業療法士です。

ただ、ひとつだけ持ち寄れるものがあります。床から立ち上がれなくなること。排泄を我慢してしまうこと。介護している家族のほうが先に倒れること。これは災害とは関係なく、平時の在宅の現場で毎日起きていることです。避難所という環境は、それを一気に、多くの人に同時に起こします。

そして現場を見ていて思うのは、同じ体育館、同じ物資、同じ人数でも、3週間後の状態はまるで違うということです。何が分けるのか。

運営する人が「何を選べるか」を知っているかどうかだと思っています。

椅子を置くという判断。カーテンを1枚引くという判断。誰を休ませるかという判断。どれも予算も資格もいりませんが、その選択肢を知らなければ選べません。運営者の裁量は、それくらい大きく現場を左右します。

この記事は、その選択肢を並べたものです。順番に大事なものから書きます。


1. まず「立ち上がれる高さ」をつくる

避難所で高齢の方に何が起きるか。床に座ると、立ち上がれなくなります。

体育館の床、薄いマット。ここから立ち上がるには、深くしゃがんだ状態から全身を持ち上げる動作が必要です。膝や股関節への負担が大きく、健康な人でもきつい。高齢の方には、実質的に「立てない」高さです。

そして立てないと、どうなるか。トイレに行くのを我慢します。水分を控えます。動かなくなります。ここから体力・筋力・気力が落ちていきます。

これは経験則ではありません。国が同じことを書いています。

生活不活発病防止のためにも、立ち上がりやすいベッドの導入は効果的です。

— 内閣府(防災担当)避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(平成28年4月/令和6年12月改定)「12. 寝床の改善」

同じ項目には、エコノミークラス症候群を引き起こす血栓の発生防止として、定期的に体を動かすこと・弾性ストッキングの導入も並記されています。JRAT(日本災害リハビリテーション支援協会)も、災害フェーズごとの支援方針のなかで復旧期の柱に「生活不活発病予防」を掲げています。

つまり「立ち上がりやすさ」は、快適さの問題ではなく、健康被害を防ぐための項目として位置づけられています。

面積の話も、ついでに整理しておきます。

内閣府の同じ項目には「スフィア基準」への言及があります。人道支援の国際基準で、避難所の広さの話をするとよく出てくる数字です。スフィア・ハンドブック2018(p.254)の該当箇所は、こうなっています。

1人あたり最低3.5平方メートルの居住スペース(調理スペース・入浴場所・衛生設備を除く)。寒冷地または屋内調理・入浴・衛生設備を含む都市部では4.5〜5.5平方メートル。最高部の内法天井高は2メートル以上(高温地域では2.6メートル)。

— スフィア・ハンドブック2018 p.254「Key indicators」

ただし、この数字を「達成すべき目標」として読むのは誤りです。同じページの解説にこう書かれています。

最低算定値(1人3.5平方メートル)を採用することの帰結を慎重に検討し、変更する場合はパートナーと合意すること。そして全員がその最低値へ可及的速やかに近づくようにすること。

— スフィア・ハンドブック2018 p.255「Guidance notes」

3.5㎡は下限であって、そこに到達したら十分という線ではありません。しかも本来は「壁と屋根で囲われ、世帯が炊事・食事・就寝・着替えを行う空間」の指標なので、体育館の一区画に機械的に当てはめられる数字でもありません。

現場で使うなら、「3.5㎡あるから大丈夫」ではなく「3.5㎡を下回っているなら急ぐ」という向きで読んでください。

必要なのは、座面の高さです。

  • 椅子(パイプ椅子でも、しっかりした段ボール椅子でも構いません)
  • 簡易ベッド・段ボールベッド
  • 肘掛けがあるもの、または横に手をつける台があるもの

原理はシンプルで、座面が高いほど立ち上がりは楽になり、手で押せる場所があるとさらに楽になります。膝の角度が浅いほど、必要な力が減るからです。

段ボールベッドが避難所で導入されるのは、床のホコリを吸いにくいという理由もありますが、「立ち上がれる高さ」が確保できることの意味が非常に大きいと考えています。

これも私見ではありません。JRATは活動指針のなかに、避難所環境の「評価と整備」と並べて、「適切な選定と設置(段ボールベッドなど)」を明記しています。つまり、ベッドを入れることは福祉的な配慮ではなく、リハビリテーション支援の一環として位置づけられた行為です。運営者が「余裕があれば」と考える種類のものではありません。

運営者の判断ポイント:高齢の方の区画に、まず椅子とベッドを。全員分そろわないなら、床から立てない人から順に。

なお実務では「どこから調達するか」が最大の壁になります。個人からの持ち込みではなく、市町村の災害対策本部・社会福祉協議会・県を通した要請ルートに乗せてください。ここでも窓口の一本化が効きます。


2. 排泄とプライバシーは、同じ問題です

これは声に出しにくく、だから後回しになりやすい領域です。

避難所でおむつ交換やパッド交換が必要な方がいる場合、「どこで交換するか」が確保されていないと、交換の回数そのものが減ります。人目があるところではできない。かといって毎回トイレまで移動するのは、介助する側もされる側も大変です。

結果として何が起きるか。交換を我慢する。水分を控える。皮膚のトラブルが起きる。尿路のトラブルが起きる。そして何より、尊厳が削られます。

必要なのは、大がかりな設備ではありません。

要素 なぜ必要か
仕切られた空間(テント・パーテーション・カーテン・養生シート) 人目があると交換回数が減る
座れる高さの椅子か台 立ったままの交換は介助者の腰を壊す
使用済みのものを捨てる導線(袋・蓋つき容器・回収ルート) 捨て場がないと交換をためらう
手指衛生の場所 感染対策

この4つがそろうと、交換の回数が確保できます。回数が確保できると、健康被害が減ります。

これも思いつきではありません。内閣府のガイドラインに付属する避難所チェックリストには、「特別ニーズ対応を実施する」の項目として、5-4「装具交換やおむつ交換のための折り畳(み台)」が挙げられています。同じ並びの5-1は「トイレに行くのに配慮が必要な人等の把握を実施する」で、担当として運営委員会と並んで「避難者」が記されています。

そして重要なのは、この空間を「おむつ交換用」と名指ししないほうがいいということです。着替え、授乳、体調が悪いときに横になる、少し一人になる。用途を限定しない多目的の仕切り空間として置くほうが、使う人が入りやすくなります。

ただし用途を広げるほど、運用の調整は必要になります。男女で分ける、時間帯を決める、使用中が外から分かるようにする。空間を作ることと、使い方を決めることはセットです。

運営者の判断ポイント:プライバシーは、余裕がある人のための贅沢ではありません。健康を守るための実用インフラです。優先順位を下げないでください。


3. 車の中で寝ている人を、見落とさない

避難所の名簿に載らない人たちがいます。駐車場で車中泊をしている人です。

ペットがいる。赤ちゃんが泣く。人の多い場所が苦手。余震が怖くて建物に入れない。理由はさまざまですが、車を選んだ人ほど、支援から漏れます。

しかも構造的な問題があります。内閣府の資料に、こんな調査結果が載っています。

災害時にテント泊や車中泊の避難者を想定した対応策を検討している自治体は、全体の45.2%に留まる

— 内閣府(防災担当)在宅・車中泊避難者への支援等について(令和6年11月)※出典データは平成28年度調査

検討していない理由として挙がったものの中に、これがあります。

エコノミークラス症候群の発症が懸念されることから、車中泊での避難は好ましいとは言えず、計画などに盛り込むと車中泊が肯定される懸念がある

— 内閣府(防災担当)在宅・車中泊避難者への支援等について(令和6年11月)

危ないから、計画に入れない。その結果、実際に車中泊する人は誰にも把握されないまま、いちばん危ない環境に置かれます。

車中泊をなくすことはできません。あるものとして扱うしかない。


① エコノミークラス症候群(最重要)

厚生労働省が予防法を6項目にまとめています。

①ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行う
②十分にこまめに水分を取る
③アルコールを控える。できれば禁煙する
④ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない
かかとの上げ下ろし運動をしたりふくらはぎを軽くもんだりする
眠るときは足をあげる

— 厚生労働省「エコノミークラス症候群 予防のために

作業療法の立場から、⑤と⑥を補足します。

具体的に
かかとの上げ下ろし座ったまま、つま先を床につけたままかかとを上げ下げ。ふくらはぎが硬くなるのを手で確かめながら。1時間に1回、20〜30回
足首を回す靴を脱いで、左右10回ずつ
足をあげて眠るクッション・畳んだ毛布・荷物を足元に。心臓より少し高く
車外に出る2〜3時間に1回、数分歩く。これがいちばん効きます

内閣府も、車中泊避難には弾性ストッキング等の予防物資の配布が必要だと明記しています。

車中泊避難については、健康面から注意が必要な点も多く、弾性ストッキング等のエコノミークラス症候群の予防に必要な物資の配布が必要であるほか、アウトリーチや自らの情報の登録により、状況の把握を進めることが考えられる

— 内閣府(防災担当)避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針

水を控えないこと。トイレが遠いと水分を控えます。これは第1節・第2節と同じ構造です。トイレへの導線が、血栓のリスクを決めます。


② 一酸化炭素中毒

内閣府のガイドラインは、避難所で確認すべき健康項目に「一酸化炭素中毒」を挙げています。車中泊では、主に2つの経路で起きます。

危険な状況なぜ
エンジンをかけたまま寝る排気口が塞がると排ガスが車内へ入る。積雪・土砂・落ち葉・壁への接近すべてが原因になる
車内で燃焼器具を使う(カセットコンロ・練炭・石油ストーブ)密閉空間で急速に一酸化炭素が溜まる

原則はひとつです。寝るときはエンジンを切る。

一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには体が動きません。眠っている間に進行します。

  • 暖房・冷房が必要でエンジンをかけるなら、起きている間だけ
  • かける前に排気口の周りに物がないか確認
  • 車内で火を使う調理をしない
  • 窓を少し開ける(防犯上、開ける側は状況で判断)

③ 暑さ・寒さ・視線 — サンシェード

夏の車内は短時間で高温になります。冬は逆に、鉄とガラスの箱は急速に冷えます。エンジンを切って寝る以上、温度は道具で調整するしかありません。

サンシェード(日よけ・目隠し)が、3つを同時に解決します。

効果中身
暑さ直射日光を遮り、車内温度の上昇を抑える
プライバシー外から見えない。着替え・授乳・仮眠ができる
睡眠朝日や駐車場の照明を遮り、睡眠が途切れにくくなる

フロント用のシェードだけでなく、側面・後方の窓には銀マット・段ボール・タオルでも代用できます。

第2節で書いた「仕切られた空間」の話と同じです。見られない場所があるかどうかが、その人が水を飲むか、着替えるか、眠れるかを決めます。

冬は、寝袋・毛布・銀マットを体の下にも敷くこと。冷えは下から来ます。


④ 運営者ができること

車中泊は「個人の勝手」ではなく、環境調整の対象です。内閣府のチェックリストにも項目があります。

3-5 車中泊避難のための大規模駐車場を確保する
4-4 車避難者へエコノミークラス症候群防止の周知を実施する

— 内閣府 避難所チェックリスト(令和6年12月改定)

運営者の判断ポイント

  • 場所を決める。トイレと物資配布に近い駐車区画を車中泊用に指定する。指定避難所の駐車場のほか、大規模公園・商業施設の駐車場・道の駅も想定されています
  • 名簿に載せる。車中泊者は自分から名乗り出ません。こちらから回って登録する(内閣府のいう「アウトリーチ」)
  • 物資を届ける。弾性ストッキング、水、毛布、サンシェード
  • 声をかける。1日1回でいい。「足、動かしてますか」「昨日エンジンかけて寝ましたか」

駐車場は避難所の外ではありません。避難所の一部です。


4. 「支援される人」を増やしすぎない

ここからが、作業療法の視点でいちばん書きたかったことです。

最初に書いておくと、これは私の思いつきではありません。国の指針に、はっきり書かれています。

(3)住民による自主的運営
①避難所における支援は、被災者の生活再建という最終目標を視野に入れ、その対応力の向上につなげていくことが重要である。そのため、避難所の運営担当者は、避難所の設置後、施設管理者や市町村職員による運営から避難者による自主的な運営に移行するため、(略)その立上げや地域のコミュニティ維持に配慮した運営になるよう支援すること。
③住民による自主的な運営を進めるにあたっては、炊事や清掃などの役割分担が、一部の住民に負担が偏らないよう配慮すること。

— 内閣府(防災担当)避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(平成25年8月/令和6年12月改定)

「職員による運営から、避難者による自主的な運営へ移行する」——これが国の方針です。そして③で、負担の偏りへの注意まで書かれている。

つまり役割を返すことは、運営者の親切ではなく、もともと想定されている道筋です。

私がここに足したいのは、その理由の部分です。指針は「対応力の向上」「生活再建」と書いています。作業療法の言葉にすると、こうなります。

避難所には、二つの偏りが同時に存在します。

支える側は、役割が多すぎて休息がありません。運営スタッフ、介護している家族、保育や見守りを担う人。自分も被災しているのに「自分は大丈夫」と言い続け、弱音を吐く相手がおらず、休むことに罪悪感がある。

一方で、避難している人の中には、休息はあるが役割がない人がいます。体調に問題がなく、手も動く。でも「支援される側」として区画に座っている。

この二つが、同じ建物の中にあるのに、再配分されていません。

作業療法では、人が回復するのに「役割」と「休息」の両方が要ると考えます。災害時はこの二つが人によって極端に偏る。支える人は役割だけ、支えられる人は休息だけになる。どちらも、回復から遠ざかる状態です。

そして見落とされがちなのは、役割を失うこと自体が、災害による被害の一部だということです。

家が壊れた。仕事場が閉まった。孫の世話をしていた人は孫と離れた。「自分は誰かの役に立っている」という感覚は、家財と一緒に失われます。そのまま数週間「支援される人」であり続けると、動く力だけでなく、動く理由が薄れていきます。

だから、余力のある人に役割を戻すことは、人手不足の解決であると同時に、その人自身の回復の話でもあります。

ただし、やり方を間違えると加害になります。

  • 強制しない。割り当てではなく、選べる形にする
  • 断れるようにする。「今日はやめておく」が言える空気をつくる
  • 小さくする。1回15分で終わることから
  • 名前をつける。「お手伝い」ではなく「お茶の時間の担当」。役割には輪郭が要る
  • 見極める。家族を亡くした方、体調の悪い方に役割を持ちかけない。喪失の直後は、休むことが仕事です

役割の例としては、お茶の時間の準備、掲示板の更新、物資の数を数える、子どもの相手を交代でする、といったものです。運営の中枢を任せる必要はありません。輪郭のはっきりした小さな役割が、いくつかあればいい。

運営者の判断ポイント:「手伝ってくれる人を探す」と考えると人は集まりません。「役割を返す」と考えると、話しかけ方が変わります。

なお、JRATの活動にも被災者が体を動かす場面は含まれています。集団体操、風船バレー、屋外での体操。ただしそれらはリハビリ専門職が被災者に働きかける訓練やレクリエーションです。この節で書いているのは、運営者が、避難している人に役割そのものを返すという別の話です。主語が違います。

そして専門職が来ていない避難所、来る前の数日間にも、運営者はそこにいます。専門職の不在を埋めるのではなく、専門職が来る前からできることとして読んでいただければと思います。

そのうえで、国の指針が③で釘を刺している「一部の住民に負担が偏らないよう」は、現場で最も起きやすい失敗です。動ける人・気の利く人に仕事が集まる。役割を返したはずが、新しい「支える側」を一人作っただけになる。返す先を増やすことと、一人に寄せないことは、同じ作業です。


5. 支える人の休息を、制度にする

前節と対になる話です。役割を再配分したら、次は休息を再配分します。

「疲れたら休んでください」では、人は休みません。特に責任のある立場の人ほど休みません。

必要なのは、お願いではなく仕組みです。

  • 交代制を明文化する。「あなたは何時から何時まで休む」と割り当てる。名前と時間を紙に書く
  • 一人になれる場所を1つ作る。5分でいい。誰にも見られない場所。(前節の多目的スペースが兼ねられます)
  • 「大丈夫ですか」ではなく「今日、何時間寝ましたか」と聞く。前者には「大丈夫」としか返せません。後者には事実が返ってきます
  • 役割を分割して渡す。一人が抱えている仕事に名前をつけて切り分け、別の人へ

子どものケアは大事です。それは誰も否定しません。ただ、子どもを支えているのは大人です。その大人が限界を超えると、子どものケアも同時に崩れます。大人のケアは、子どものケアの前提条件です。


6. 「あの人に聞けばいい」が、いちばん効く

環境の話をしてきましたが、実のところ最も効果が大きいのは「困ったときにすぐ相談できる相手が、その場にいること」だと考えています。

避難所での困りごとは、多くが小さくて具体的です。

  • 母が夜トイレに起きられない
  • 薬が足りなくなりそう
  • 車椅子が段差で通れない
  • 父が最近ぼんやりしている

一つひとつは、専門職なら数分で答えが出るか、つなぐ先が分かるものです。でも「誰に聞けばいいか分からない」と、そのまま数週間放置されます。そして小さな困りごとが、寝たきりや健康被害に育ちます。

だから必要なのは、相談窓口の掲示ではありません。「あの人に聞けばいい」と顔が分かる誰かが、決まった時間に、決まった場所にいることです。保健師、看護師、リハビリ職、社会福祉士、誰でもいい。

運営者の判断ポイント:紙を貼るのではなく、人を座らせる。「毎日15時、体育館の入口横」と決めるだけで、相談は出てきます。


おわりに

避難所の環境づくりというと、設備や物資の話に聞こえます。でも並べてみると、ほとんどが「判断」です。

椅子をどこに置くか。カーテンを何に使うか。誰に休んでもらうか。誰に役割を返すか。どれも予算ではなく、選択肢を知っているかどうかで決まります。

そしてその判断ができる立場にいるのは、運営している人です。裁量が大きいということは、負っているものも大きいということです。だからこそ、その人自身が休めているかが、いちばん最初に確認されるべきことなのだと思います。


① A4印刷用チェックリスト checklist-a4.html — ブラウザで開いて Cmd+P で印刷できます。
避難所の環境チェックリスト

避難所の環境チェックリスト

高齢の方・体の不自由な方がいる避難所で、運営する立場の人が確認する14項目

記入日:
避難所名:
記入者:

A. 立ち上がれるか(最優先)

確認確認項目根拠
床から立てない人に、椅子か簡易ベッドが届いているか内閣府①
立ち上がるときに手をつける場所があるか内閣府①

なぜ最優先か:床から立てないと、トイレを我慢し、水分を控え、動かなくなります。ここから体力・気力が落ちます。全員分そろわないなら、床から立てない人から順に。

B. 排泄とプライバシー

確認確認項目根拠
仕切られた空間があるか(用途を「おむつ交換用」に限定していないか)内閣府②
その空間に、座れる高さの台・捨てる導線・手を洗う場所があるか内閣府②
使い方(男女・時間帯・使用中の表示)を決めたか

なぜ必要か:交換する場所がないと、交換の回数そのものが減ります。皮膚・尿路のトラブルにつながります。プライバシーは贅沢ではなく、健康を守るインフラです。

C. 役割と休息

確認確認項目根拠
余力のある人に、断れる形で、小さな役割を返せているか内閣府③
喪失の直後の人・体調の悪い人に、役割を持ちかけていないか
支える人の休息が、口約束でなく紙に書かれている
今日何時間寝ましたか」と聞いた人が今日いるか

注意:役割は割り当てではなく、選べる形で。「今日はやめておく」が言える空気を。1回15分から。「お手伝い」ではなく「お茶の時間の担当」と名前をつける。

喪失の直後は、休むことが仕事です。

そして一部の人に負担が偏らないように。動ける人に仕事が集まると、新しい「支える側」を一人作っただけになります。

D. 車中泊の人

確認確認項目根拠
車中泊の人を把握し、名簿に載せた内閣府④
車中泊用の区画を、トイレと物資に近い場所に指定したか内閣府⑤
「寝るときはエンジンを切る」を伝えたか内閣府⑥
弾性ストッキング・水・サンシェードを届けたか内閣府④

エコノミークラス症候群:厚労省の予防法は「軽い体操」「こまめな水分」「かかとの上げ下ろし・ふくらはぎを揉む」「眠るとき足をあげる」「ゆったりした服装」。2〜3時間に1回、車外で数分歩くのがいちばん効きます。

一酸化炭素中毒:エンジンをかけたまま寝ない。排気口の周りに雪・土砂・落ち葉がないか確認。車内で火を使わない。無色無臭で、眠っている間に進行します。

サンシェード:暑さ・視線・朝日を同時に防ぎます。側面や後方は銀マット・段ボール・タオルで代用可。

E. 相談できる人

確認確認項目根拠
決まった時間・決まった場所に、相談できる人が座っているか

掲示ではなく、人を座らせる。「毎日15時、入口横」と決めるだけで相談が出てきます。「母が夜トイレに起きられない」「薬が足りない」——放置すると数週間で寝たきりに育ちます。

根拠と出典

根拠①:内閣府(防災担当)「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン」(令和6年12月改定)

生活不活発病防止のためにも、立ち上がりやすいベッドの導入は効果的です

根拠②:同ガイドライン付属チェックリスト 5-4

装具交換やおむつ交換のための折り畳(み台)

根拠③:内閣府(防災担当)「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)

施設管理者や市町村職員による運営から避難者による自主的な運営に移行する

炊事や清掃などの役割分担が、一部の住民に負担が偏らないよう配慮すること

根拠④:内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)

車中泊避難については(略)弾性ストッキング等のエコノミークラス症候群の予防に必要な物資の配布が必要であるほか、アウトリーチや自らの情報の登録により、状況の把握を進める

根拠⑤:同ガイドライン付属チェックリスト 3-5 / 4-4

車中泊避難のための大規模駐車場を確保する / 車避難者へエコノミークラス症候群防止の周知を実施する

根拠⑥:同ガイドラインは避難所の健康確認項目に「一酸化炭素中毒」「エコノミークラス症候群」「熱中症」「低体温症」を挙げている

このリストは内閣府の公式チェックリストの置き換えではありません。公式版はより網羅的です。本紙は、高齢の方・体の不自由な方の視点から14項目に絞った補完版です。

作成:訪問リハビリテーション従事の作業療法士。避難所運営の経験に基づくものではありません。現場の実情に合わない項目があれば読み飛ばしてください。

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