AIで「1日の流れ」「1週間の流れ」を見える化する作業療法
作業療法の現場で、こんな場面はありませんか?
- 「この方の1日の全体像が、なんとなくしかつかめない…」
- 「『家でなんとなく過ごしています』で会話が終わってしまう」
- カンファレンスで生活の様子を説明するときに、頭の中の情報を整理するのが大変
そんなときに役に立つのが、AIを使って“生活の流れ”を表に整理してしまう方法です。 対象者ご本人の了承を得た上で、音声入力で生活の様子を聞き取り、それをAIに渡して「1日の流れ」「1週間の流れ」を見える化していきます。
- 生活リズム
- 活動量の偏り
- 外出頻度
- 休息バランス
何をするのか? ざっくり全体像
やること自体は、とてもシンプルです。
- 対象者・ご家族に、「1日の大まかな流れ」「1週間の大まかな過ごし方」を聞く
- その内容を、対象者の了承を得た上で、OTが音声入力で記録する
- 音声入力をテキスト化し、AIに渡して 「1日のタイムライン表」「1週間の生活パターン表」を作ってもらう
- 出来上がった表を見ながら、生活のリズムや活動量の偏りについて一緒に確認する
つまり、聞き取った生活情報を“整理する役割”をAIに手伝わせるイメージです。
聞き取りのコツ:音声入力でラフに話してもらう
細かい時刻まで聞く必要はありません。「だいたいこのくらいの時間帯」というレベルで十分です。
1日の流れを聞くとき
- 「朝はだいたい何時ごろ起きていますか?」
- 「午前中はどんなふうに過ごすことが多いですか?」
- 「お昼ごはんのあと、夕方まではどうされていますか?」
- 「お風呂と就寝の時間帯はどのあたりですか?」
音声入力のイメージ:
「朝は7時ごろに起きて、トイレに行ってから朝ごはんです。午前中はほとんどテレビを見ています。
昼は12時ごろに妻と一緒に食事をして、午後もソファでテレビかうたた寝が多いです。
夜は21時ごろにお風呂、22時半くらいに寝ます。」
1週間の流れを聞くとき
- 「この1週間を思い出すと、決まった予定はありますか?」
- 「デイサービスや通院、買い物、家族が来る日などはありますか?」
「月・水はデイサービス、金曜は病院に行きます。火・木はだいたい家で過ごしています。
土曜は娘と買い物に行くことが多くて、日曜は家族が遊びに来るときがあります。」
こうした音声メモをあとでテキストとして取り出し、そのままAIに貼り付けて活用します。
AIにお願いする内容のイメージ
音声入力をテキスト化したものをAIに渡して、次のように依頼します。
以下の文章から、
①「1日の生活タイムライン」
②「1週間の生活パターン」
を日本語の表に整理してください。
【1日の生活タイムライン】
・列は「時間帯」「主な活動」「場所」「一緒にいる人」「備考」
・時間帯は「〜時ごろ」など大まかで良いです
・書かれていないことは想像で付け加えず、「不明」としてください
【1週間の生活パターン】
・列は「曜日」「午前」「午後」「夕方〜夜」「外出・通院の有無」「備考」
対象テキスト:
「ここに音声入力で記録した内容をそのまま貼る」
これだけで、AIが読みやすい表の形に整えてくれます。OTは、内容に誤りがないかを確認し、必要に応じて少し修正するだけです。
この方法のメリット
1. 生活の全体像が「一目でわかる」
1日の表・1週間の表を並べて見ることで、
- 座っている時間が極端に長い日
- 外出がほとんどない曜日
- 特定の時間帯だけ活動が集中している時間帯
など、生活の偏りが視覚的に把握しやすくなります。
2. 本人・家族と“同じもの”を見ながら話せる
口頭だけではぼんやりしがちな生活の話も、表を一緒に見ながら話すことで、共有しやすくなります。
- 「この時間帯に、もう少し体を動かす時間を入れてみましょうか」
- 「外出の日を週にもう1日増やせると良さそうですね」
こうした話し合いが、“一緒に生活を組み立てていく感覚”につながります。
3. 多職種への説明資料としても活用できる
ケアマネ、看護師、ヘルパーなど多職種に生活の様子を説明する際にも、この表はそのまま活用できます。
- 初回カンファレンスの資料
- 計画書作成時の背景情報
単なる印象ではなく、整理された“生活の地図”として共有できる点が大きな強みです。
音声入力と同意について
重要な前提として、音声入力での記録は必ず対象者・ご家族の了承を得た上で行う必要があります。
- 何のために音声入力を使うのか
- どのようにデータを扱うのか
- 個人情報の取り扱いに注意していること
これらを簡潔に説明し、納得してもらった上で活用していくことで、信頼感のある運用につながります。
AIは「判断」を代わりにしてくれるわけではありませんが、生活情報を整理してくれる心強いパートナーにはなります。
1日の流れ、1週間の流れを音声入力でさっと記録し、AIに表へ整えてもらう――そんな小さな一手からでも、作業療法の「生活を見る力」を、より伝わりやすい形に変えていくことができます。

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